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誰だってアイドル #3


女友達と好きなタイプについて話していたら「最近オフィシャルな解答をしすぎて本当に自分が思っていることがわからなくなっちゃった」と言われた。会社の男性からよく聞かれる質問に対して、相手の求める答えを言っているということだった。

「アイドルかよ」と突っ込んだけど、自分にも心当たりがあった。女の人は無意識でも意識的でも、”相手の求める女の人”を演じることは多いのかもしれない。それはどうしてなんだろう。自分の場合は”楽”だからだと思う。相手を嫌な思いにさせることも、その場で不毛な議論をすることも無い。だけど楽をしているようで、長時間していると疲れてしまう。それをしているときは気を張っているから。

自分はいつの間にか、当たり前のように”女の役”を演じることが染み付いてしまったけれど、他の女の人はどうなんだろう?もしかしたら男の人も、またどちらでもないという人も、みんなアイドルのような回答を求められるのだろうか。

佐藤麻優子

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この連載では、写真家・佐藤麻優子とともに、異性の眼差しにさらされ規定される「女性性」について「アイドル」に扮した人々のポートレートとインタビューを通して考えていきます。第3回目は、山口草也さん。












女性という役割について|山口草也

小学校の時に好きだった女の子が、同性としか喋らない男性恐怖症みたいな子で。嫌われないために男らしさを客観視するようになった。その子と付き合うことになると、手を繋いだりキスしたりすることはあまりしなくて、周りの男の子と同じようにするとうまくいかないだろうなと思ったことが、女性らしさを考え始めたきっかけかな。それから少しずつ女の人になりたいという気持ちが芽生えていった。

高校生では、クラスの男子はだいたい嫌いだった。その代わりネット上のコミュニティに首を突っ込んでいって。モバゲーのサークルなんだけど……。そこにセクシャル・マイノリティの友達が2、3人いた。別にそういう人たちがいたから入ったわけじゃなかったけど、ずっと性別を意識してきたから会話が成立したのかなと思う。自分が受け入れてもらえる場所があると確認できたことは大きかったかも。

振り返ってみると、高校の時が一番女の人になりたいと思ってた。たぶん当時は、ネット上にいた退廃的でメンヘラに近い女の子たちへの憧れがあって、そういう子たちがまとっている雰囲気を自分もまとってみたかったんだよね。でも、だんだん髭は生えてくるし、指も太くなってくる。一時はそれに抗ってたけど、ある時、諦めた。自分は女の子が好きだし、結局は身体的に男だなと。仮にホルモン注射をしても、かわいい女の子になれるとは限らないし。あとは周りの目もあったかな。地方の高校だったし、私服登校だったからスカートを履くこともあったけど、引かれることの方が多かったから。

大学生になってからは、男としてやっていく気持ちに収束していってたんだけど……。最近は、海外のモデルさんのインスタを見てると、男も女もごちゃごちゃになっていて、そのうえかっこいい人っているじゃん。それを見て好きにしていいんだと思った。我慢しなくていいって。だから今は、かわいいネイルとかを塗ったりして、100%女の人になれないけど、なりたい自分でいられる。なんかもう自分を見てびっくりされてもいいやという気がしてる。

(聞き手:酒井瑛作、佐藤麻優子)

CREDIT
Photographer:佐藤麻優子(Mayuko Sato)
Costume Designer:Miya Nishimiya
Hair&Make:Toyoda Yousuke
Editor:酒井瑛作(Eisaku Sakai)