特集

アンダーグラウンドのヒーローたち -DJ Sonikku インタビュー -

「来る前から東京は常に明るくて忙しない街なんだろうなと思ってましたけど、その通りでした(笑)」と、初来日の印象を柔らかい口調で話すDJ SonikkuことTony Donsonは、ロンドンを拠点に活動する弱冠22歳のトラックメイカーだ。



勘の良い方はもう「ソニック」という名前で何となくお気付きかと思うが、彼は幼少期にSEGAが1988年に発売したゲーム機「メガドライブ(MEGA DRIVE)」を通じてエレクトロニックミュージックと出会い、14歳頃から同ゲーム機に搭載されているYAMAHA YM2612という音源チップを使ってトラックメイクし始めたという。
「僕にとっての初めてのエレクトロニックミュージックは、SEGAメガドライヴの『ベア・ナックル(英題:Street Of Rage)』のサウンドトラックでした。 世界的なゲーム音楽作曲家の古代祐三さんが手掛けていて、テクノやハウスの要素が強かったんです。古代さんからは物凄く影響を受けました」

また、DJ Sonikkuとしてのキャリアを差し置いても彼は筋金入りの親日家で、日本のアニメを観まくって箸の使い方を学んだそう。日本のアニメの何が魅力的だったのかと尋ねると、「デザインのタッチとか派手な色使いとかからはエスケーピズムを感じるんですけど、UKのアニメよりも扱っている内容に深みがあると思うんです。『セーラームーン』や『カードキャプターさくら』でレズビアンのキャラクターが出てきたり、そういう描写も普通にありますけど、イギリスのアニメではまずあり得ないことですよ」と、流石の分析と着眼点。そんなポイントに着目して語る日本人は少ないはずだ。



一方、SEGAメガドライヴと同様にDJ Sonikkuのサウンドを形成しているもう1つの大きな要素は、80’sポップだ。彼はMadonnaの大ファンを公言しており、さらにはJanet Jacksonのダブ・ヴァージョンに詳しく、 NTSラジオのDJミックスでは荻野目洋子をプレイする徹底っぷり。彼がゲーム音楽でなく、ダンスミュージックを志向する理由はここにある。
「日本のゲーム音楽と、80年代のニューヨークのクラブカルチャーと、ロンドンのクラブカルチャーを融合させることで、奇妙だけど面白い世界観を作りたいと思っていて。そういう意味では最新作『All My Friends』はそれを上手く表現できた作品だと思っています。できたらゲームのための音楽も作りたいと思うんですが、例えば1st EP『Secret Island』では、楽園のような島のステージのサウンドトラックをイメージしていて、いまDJ Sonikkuとして発表している作品はゲームの世界を想像して作っている側面もあるんです」



ヴィンテージ級のゲーム機と、Rolandのヴィンテージ・ドラムマシンTR-707、727、909の独特なキックを組み合わせた、ノスタルジックに煌めくDJ Sonikkuの楽曲は瞬く間にエレクトロニックミュージックのマニアたちを魅了した。しかし、Boiler Roomが全くの無名だった彼の楽曲をピックアップしたことも驚きだったが、80Kidzが『Block.fm』の番組でトラックをプレイしたことは、その上をいく予想外の出来事だったという。SNSを通してDJ Sonikkuからコンタクトしたことで交流が始まり、80Kidzが“Chemical Plant”のリミックスを手掛けたことで、この来日も実現。80KidzのAli&はDJ Sonikkuの第一印象をこう語る。「テクノやハウスでもあるんだけど、エレクトロクラッシュ的な初期のローファイ感があって、キックの音をあえてチープにしているのも良いなと思って。それで僕がDJでかける姿が想像できたんですよ。あと『All My Friends』はアートワークもユニークで目を引きましたね」。
一方のJUNは、「DJとして置き換えても、アーティストとして自分の世界観をしっかり構築したい、こだわりが強い人なんだなということが伝わってきて見ていて面白かったですね。90分セットの8割が彼自身の曲だったみたいで、ゆくゆくはライヴセットにしたら良いですよね」とDJ Sonikkuのパフォーマンスを評価した。



しかし注目を集めたことで、思わしくない反応を受けたこともあったと言う。「UKにもチップチューンのコミュニティがあるんですが、僕自身はそのコミュニティの一部だとは全然思っていなくて……。正直に言うと、僕がTwitterを辞めたのはチップチューンのコミュニティの人たちから『ダンスミュージックにゲーム音楽の要素を使うな』って口撃されたからなんです」。
しかし、この出来事はDJ Sonikkuのアーティスト・ブランディングや今後のキャリアをより考える機会になったようで、「そういう人たちと影響元が同じでも、僕はさらに幅広く考えながら、自分が受けた影響を素直に表現したいと思っています。あと、僕はセルフプロデュースを仕切りたくて、音楽に関するあらゆるプロセス、例えばアートワークとかプレスリリースとかにもかなりこだわっているんです。だからマネージャーとよく闘ってますね(笑)」と、彼の作品をリリースしているレーベル〈Lobster Theremin〉のオーナーで、良きマネージャーでもあるJimmy Asquithとの関係性も交えながら話す。「〈Lobster Theremin〉はまだ設立から3年しか経ってないのに、知名度も上がってますし、スタッフも増えていて、リリースしている作品もディストリビュートしている作品も良いんです。UKでも特に好きなレーベルなので、そこから作品をリリースできて幸せです」

インタヴューの最後に今後の展望を尋ねてみると、〈Lobster Theremin〉と並ぶお気に入りのレーベルに〈PC Music〉や〈Night Slugs〉を挙げていたDJ Sonikkuらしい答えが返ってきた。「理想はクラブミュージックとポップミュージックを融合です。そのためにはまずアンダーグラウンドの音楽の良さを本当に理解している人たちから確かな評価を得ることが大切だと思っています。もちろんMadonnaとかKaty Perryも好きなんですけど、インダストリアルとかもっとアグレッシヴな要素を足して面白い音楽を作りたいですね」


STAFF

Photo: 嶌村 吉祥丸(Kisshomaru Shimamura)
Writer: 松原 裕海(Hiromi Matsubara)
Translator: アラン・ボスハート(Alain Bosshart)
Editor: 廣田 利佳(Licaxxx)